『Sky 星を紡ぐ子どもたち』記事の第二弾!「音」編!

こんにちは、ヤツボシ(@yatsuboshi_です。

今回は『Sky 星を紡ぐ子どもたち』の記事第二弾!「音」編と題してこのゲームの音にまつわる話を紹介します!

まずは最初の紹介記事をご覧になってからこちらの記事をお読みいただくことをオススメします!

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』2019BESTゲーム、ソーシャルの新しいカタチ。

Sky』は、スマホ向けゲームとは思えないような美しいグラフィックが特徴的ですが、サウンドデザインも同じように美しくエモーショナルなものになっています。

ゲームにおける音はプレイヤーへのインフォメーションという役割がありますが、このゲームの音響は単に情報を与えるだけではなく感情を呼び起こすようなものとしてもデザインされています。

リードオーディオデザイナーを担当されたのは水谷立さん、オーディオ・ディレクター兼作曲家を担当されたのはVincent Diamanteさんです。

※2020.04.27訂正 水谷立さんの漢字表記が間違っていました。正しくは 律→立 でした。訂正してお詫び申し上げます。

今回は、その二人のインタビュー記事などから音にまつわる話をピックアップしていきます。

デザインのコンセプト

リードオーディオデザイナーの水谷立さんはSkyプロジェクトのサウンドデザインのコンセプトを、美術大学でおこなった講演のなかで話されています。以下、レポート記事を引用しますと、

水谷氏はオーディオのコンセプトとして、「効果音(SE)で情報だけでなく、『感情』を伝えること」を挙げた。通常ゲームオーディオではBGMで感情を伝え、SEで情報(攻撃がヒットした、ダメージを受けたなど)を伝えることが多い。しかし、本作では効果音にもその役割が求められたのだ。また、「人と人とのつながりを音で感じさせること」を常に意識することも重要だったと述べた。「つながり」はゲームだけでなく、スタジオ全体のビジョンだからだ。

感情を伝える形と音~『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を手がけ… | CGWORLD.jp より引用

とのことです。

ゲーム上必要な情報をただプレイヤーに伝えるだけでなく感情を伝えるということをコンセプトにあげています。

またゲームをしたことがない人に対してどんなことを考えたか、オーディオはどのような役割を果たしたか、という質問に対しては、

Ritsu: When designing sound effects for Sky, I paid much attention to the background story in each realm. This includes information that we wanted to hint to players, and the reasons why specific sounds are highlighted at each specific moment. I tried not to lean on video game clichés during these times.

Sky is unique because it is minimalistic. So regardless of whether players have played another video game or not, it’s important for us to make it possible for players to instantly have a sense about a new object, creature or character through their sounds. The sound design should be a storyteller instead of text.

Using sound design to tell a story – fmod.com より引用

Ritsu:Skyの効果音をデザインする際には、各領域のバックグラウンドストーリーに注目しました。これには、プレイヤーにヒントを与えたい情報や、特定の音が特定の瞬間にハイライトされる理由が含まれます。私はこの時期、テレビゲームのクリシェ*決まり文句、定型表現。ベタ。乱用され陳腐化したもの。ユーモアに使われることも。 に頼らないようにしました。

Skyはミニマルさに特徴があります。プレイヤーが他のビデオゲームをプレイしたかどうかにかかわらず、プレイヤーが音を通して新しい物体、生き物、またはキャラクターについて瞬時に感覚を持てるようにすることが重要です。サウンドデザインはテキストではなくストーリーテラーでなければならない。

というふうに海外のインタビュー記事にて答えています。

クリシェ(お決まりの定型表現)に頼らずに、バックグラウンドストーリーに注目しながらデザインしていったと語っています。

(ここでいうゲームのクリシェとは、ダメージを受けるとこういう音が鳴るだとかレベルアップの音、アイテム取得の音とかのよくある分かりやすい表現や音色のことなどを指しているのだと思います。安直に定型表現にそってデザインするわけではなくストーリーやゲームの雰囲気を大事にしてデザインされているんですね。)

さらに音を通して色々な要素の”感じ”を掴めるようにすることが重要で、サウンドデザインはストーリーテラーでなければならないとおっしゃっています。

情報だけでなく感情・ストーリー・感覚的な部分に働きかけるようなサウンドがコンセプトになっているようです。

空を飛ぶ時の音

Skyの空を飛ぶ描写は、美しくプレイしていて爽快です。そんな気持ちいい感覚をプレイヤーに感じさせるために音も工夫されて作られています。

夢に見た空の旅のために

自由に空を飛んでみたいというのは多くの人が夢見るものだと思いますが、人々の想いが強い分だけ納得させるための説得力も必要とされます。

水谷立さんの講演内容のレポート記事には、

また、空を飛ぶことは人間であれば誰しも、子どもの頃に一度は夢見た行為だろう。それだけに空を飛ぶ行為には爽快感と満足感が必要だ。これを演出するため、飛行時の風切り音や羽ばたき音が飛行速度などに基づき、細かく変化するようにプログラムされている。

感情を伝える形と音~『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を手がけ… | CGWORLD.jp より引用

そこで本作では雲に触れたときだけに再生される、独自のSEが用意されている。「石けんをモコモコに泡立てたときの音」「炭酸飲料がグラスに注がれる音」「熱したフライパンで食材を焼く音」をマイクで録音し、ミックスして使用したのだ。水谷氏は「こうした日常生活で誰もが耳にする音は、生活と密着しているため、記憶と結びつきやすい」と説明する。本作で言えば雲に触れたときに再生することで、飢えや渇きを満たすという、ポジティブな行動の記憶が呼び起こされるというわけだ(※3)。

※3:本作に限らず、こうした現実の音を効果音に活用する手法はフォーリー(生音)と呼ばれ、ゲームや映像作品で多用される。企業によってはフォーリーを収録する専用のスタジオを設置する場合もある

感情を伝える形と音~『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を手がけ… | CGWORLD.jp より引用

と書かれています。

「空を飛ぶ音」といっても、実際に飛んだときの音をそっくりそのまま使うことがプレイヤーの気持ちいい感覚につながるとは限りません。

なので、様々な「フォーリーな音」なども使いながらデザインされるんですね。Skyの空を飛ぶ音ではプレイヤーたちの日常にある既知の音とそれを聞くシチュエーション・感覚から、ポジティブな感情を呼び起こすことも狙って選択された音が使われているようです。

何の音か、だけでなく音を聞いたとき呼び起こされる記憶・感情も含めてデザインされています。コンセプトにもある感情を伝えるサウンドデザインの一つの例と言えそうです。

操作に合わせた変化も

上の引用文中に、飛行時の風切り音や羽ばたき音が飛行速度などに基づき、細かく変化するようにプログラムされている、とありました。

これはプレイヤーの操作とプレイヤーの見ている映像に合わせて、音を鳴らしてより臨場感を高めるよう計算されているということだと思います。

実際に早く飛んでいるときには風をきる音、風をはらんでケープがバタつく音、羽ばたきとそのとき出る光の粒のキラキラした音、など様々な音が自分のプレイングに合わせて鳴らされ、より迫力と気持ち良さ(あとスノボとかで速度が出すぎたときのようなちょっとしたドキドキ)を感じることができます。

ぶつかった時、落下した時

操作によっては、ぶつかったり落ちてしまったり思い通りに飛べないこともあるでしょう。そんなときでも、ネガティブな感情にならないように音が設計されています。

ただし、ゲーム初心者にとって3D空間を自由に飛行することは、それほど容易な行為ではない。障害物に当たったり、地面に落下してしまったりすることもしばしばだ。そんなときでもネガティブな思いをすることがないように、オーディオ面でも配慮がなされている。具体的には障害物に当たったとき、楽器のように澄んだSEが再生されるのだ。また、空中から地面に降りたときも、地上からジャンプして着地したときに比べて、スムーズでインパクトの少ない音が再生されるようにしている。

感情を伝える形と音~『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を手がけ… | CGWORLD.jp より引用

ぶつかったときは、金属製の風鈴のようなリーーンという澄んだ音がします。ぶつかったときの音といえばドゴッとかドスッとかこもったニブい音がしそうなイメージですが、あえて澄んだ音を使うことでプレイヤーの感情をネガティブにしないようにしているんですね。

お決まりの表現にとらわれずに感情に配慮しながら設計されています。

フォーリーサウンドとは

さきほどフォーリーな音という言葉が出てきましたが、その意味としては

フォーリーサウンドは、映画やドラマにおいて、撮影時に録音された音と置き換えるために、登場人物の行動や周囲の環境に起因する音(足音、衣擦れ、ドアの音など)を別で録音した音、効果音。フォーリーサウンドの名前は、この手法を開発したジャック・ドノヴァン・フォーリー(Jack Donovan Foley、1891年4月12日 – 1967年11月9日)に由来。

フォーリーサウンド – Wikipedia より引用

とあります。

一例として、特撮映画「ゴジラ」の鳴き声が楽器コントラバスの弦の音から作られているのは有名な話ですが、そのように創作物の音は録音された生の音なども使いながら創られるんですね。

ゲームは実写ではないので音は必然的に別で録音することになります。ゲームの製作スタジオには録音用の設備や部署があるところもあって、ゲームにおける重要な要素の一つのようです。

以下の動画を観るとフォーリーサウンドがどういったものなのか分かりやすいです。

How to Sound Design Your Life – YouTube

演出の意図を際立たせるため、世界的な配給で吹き替える(音声を差し替える必要がある)ため、同録より確実に音を付けれるため、などの理由で録音された音を映像に重ねる必要があるんですね。

水谷立さんのインタビューによれば、Skyの製作会社Thatgamecompanyにもフォーリーサウンドの録音のための設備があるようです。

Were sounds recorded in-house?

Ritsu: Most of the foley sounds were recorded in our studio, but part of it including footsteps, water streams and rainfall sounds were recorded at multiple outside locations.

Using sound design to tell a story – fmod.com より引用

サウンドは社内で録音されましたか?

Ritsu:フォーリーな音のほとんどはスタジオで録音されましたが、足音、水流、雨音などの一部は外部の複数の場所で録音されました。

音一つとっても様々な工夫のもとに作られているんですね。

ちなみに「フォーリーアーティスト」で検索すると、フォーリーサウンドの製作を仕事にされている方の仕事内容やインタビューなどを見ることができます。普段目にしている映像やゲームの音が、思いもよらない方法で録音されているのを見るのは新鮮で面白くてオススメです。

足音

飛行時の音は速度などを計算して鳴らされているとありましたが、そのような計算による音の再生は足音でも。

水谷立さんは、

my goal for the sound of avatar navigation was to emphasize the sense of unity between players and avatars. Footsteps make sound on impact but also when the sole lifts from the surface. You can hear very subtle sounds as your foot kicks and pushes the ground. That’s the boon of the physics-based trigger system. Please try walking and running on the various surfaces at various speeds!

Using sound design to tell a story – fmod.com より引用

アバターのナビゲーションの音の目的は、プレイヤーとアバターの一体感を強調することでした。フットステップはインパクトだけでなく、ソールが浮き上がったときにも音が鳴ります。足を蹴ったり、地面を押したりするときに、非常に微妙な音が聞こえます。これが、物理ベースのトリガー・システムのメリットです。いろいろな面をいろいろな速度で歩いたり走ったりしてみてください!

とインタビューで答えています。

足音は、足と地面がぶつかる音だけでなくカカトが地面を蹴り上げるときにも音が鳴るそうです。さらにそれは地面の質感に合わせて変化します。

プレイングに合わせて物理計算され、蹴り上げる音など微妙な音も作り込んで再生されているんですね。すごいこだわりです。

またこのゲームのアバターは身長が変動するので、歩幅やステップもそれに合わせ変化します。身長が変わると足音の感じも変わってきて面白いです。小さい子はタカタカとせわしない様子でかわいらしく見えるのですが、その印象は足音によって作られている部分もあるのかもしれません。

手をつなぐ音

Skyではフレンドと手をつないで一緒に冒険することができます。ビジュアル的にもかわいらしく印象的で、このゲームの特徴的な機能の一つですが、そんな手つなぎにもこだわりのサウンドが使われているそうです。

水谷氏も「手をつないだときに、あたたかみを感じさせる音」というオーダーを受けたとき、非常に悩んだという。(中略)試行錯誤をくり返した結果、たどりついたのが心拍音だった。

(中略)

心拍音は手を繋いで互いが静止しているときだけ、かすかになるように設定されている。その一方で耳に直接聞こえない低音部分のデータを通常より多めに残したため、再生時に端末が効果音に反響して、かすかに震えるのだ。

感情を伝える形と音~『Sky 星を紡ぐ子どもたち』を手がけ… | CGWORLD.jp より引用

手をつないでるときにもこのような音が再生されていたんですね。

プレイしているときは揃って静止することがあまり無かったので気付きませんでした。そうした気づかないような細部でも可聴域外の音まで使って作り込んでいるとは。さすがです。

進行に合わせ変化するBGM

BGMに関してもただ再生されるわけでは無いようです。作曲をしたのはオーディオ・ディレクター兼作曲家を担当されたVincent Diamanteさん。Thatgamecompanyの過去作『Cloud』『Flower』などにも参加されています。

Vincent DiamanteさんはBGMについてインタビューで、

The more obvious ones vary a lot over the course of the game and include different types of layering, branching points, entrances, and exits for different cinematic beats. Not every music cue utilizes all of these, but as the player dives deeper into the game, the music uses more and more of these techniques in larger pieces that have a lot more to offer. The more subtle adaptive moves use layering and DSP effects driven by things like level and player state (standing vs. running vs. flying, position, altitude, orientation).

Using sound design to tell a story – fmod.com より引用

より明白なものは、ゲームの進行に伴って大きく変化するもので、異なる映画的なビートのための異なるタイプのレイヤー、分岐点、エントランス、エグジットが含まれています。すべてのミュージックキューがこれらのすべてを利用しているわけではありませんが、プレイヤーがゲームに深くのめり込むにつれて、音楽はこれらのテクニックをより多く使用し、より多くの機能を備えた大きなピースで使用します。より繊細な適応的な動きでは、レベルやプレイヤーの状態(立っているか走っているか飛んでいるか、位置、高度、向き)に応じて、レイヤリングやDSPエフェクトを使用しています。

と答えています。

ゲームの中には、塔のようなエリアで、ギミックを解きながら上へ上へと登っていく部分があります。そこでは特に音楽の変化が分かりやすくて、上に登るにつれてアンビエントな音楽からムーディーな音楽、壮大な音楽と変わっていきます。このゲームのストーリー構成は人生をなぞらえるような構成にもなっていて、人生の終着近くともいえるステージで展開されるドラマティックな音楽の変化は、より感動的に聞こえます。

そのように感動的に聞こえるのは、ただ単に再生されるわけではなく、ゲーム進行やプレイヤーの状態などから変化を加えて没入感を高めるようにつくられているからこそなのでしょうね。

誇りに思うディティール

効果音一つ一つがこだわりを持ってつくられていることが分かりましたが、さらにその音たちには工夫が加えられているようです。

インタビュー記事では、

Which technical detail are you most proud of?

Ritsu: The tone of many sound effects are pitch shifted in real-time according to the music key. This avoided subconscious player discomfort caused by discord between music and sound effect.

Using sound design to tell a story – fmod.com より引用

あなたが最も誇りに思っている技術的な詳細は何ですか?

Ritsu:多くの効果音は、音楽キーに応じてリアルタイムでピッチシフトされます。これにより、音楽と音響効果の不一致による潜在的な不快感を回避しました。

最も技術的に誇りに思っているディティールを聞かれて、上のように答えています。

効果音は音楽のキー(調)に合わせてリアルタイムでピッチを変化させているとのこと。これによって、 BGMと効果音をなじませて違和感をなくしている技術ということです。

一つ一つのこだわりに加えて、全体的な調和も意識しながらつくられています。

このようにして、「音」という映像に比べて意識しずらい部分にも多くの技術とこだわりが込められているということが分かります。

プレイ済みの方でも「音」を意識してプレイするとまた違った発見や魅力を見つけることができるかもしれません。

プレイしていない方は是非、魅力的な映像とストーリー、そして「」を感じることのできる『Sky 星を紡ぐ子どもたち』をプレイしてみてはいかがでしょうか。「Sky」は現在、iOSAndroidで基本無料アプリとして公開されています。

Let’s Play!

Sky 星を紡ぐ子どもたち

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また『Sky』の全体的な紹介記事もありますので是非!

『Sky 星を紡ぐ子どもたち』2019BESTゲーム、ソーシャルの新しいカタチ。

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